HOME>COLUMNコラム>2012年1月

芦屋のイタリア料理店

tel 0797-35-0847 open AM11:30~PM2:00 PM6:00~PM9:00 (L.O)

2012年1月

O'RRAU ナポリ風ラグー

 O' RRAU

O'rrau ca me piace a me
m''o ffaceva suolo mamma'.

A che m'aggio spusato a te,
ne perlammo pe' ne parla'.

Io nun songo difficultuso;
ma luva'mmel' 'a miezo st'uso.

si, va bbuono:cumme vuo'tu.
Mo ce avessem' appicceca'?

Tu che dice?Chest'e' rrau?
E io m''o mmagno pe m''o mangia'...

M''a faie dicere na parola?
Chesta e' carne c''a pummarola.

Eduardo de Filippo

皆様、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

月に3回更新目標で、コラムを書いていこうと思っていますが、
毎度、前書きに頭を悩ませる今日この頃です。

最近定番化してきた、我が家の恐妻ネタは新年早々は控えさせて頂き、ナポリのポエムでスタートです。
このポエム、その名も(オ ラウ―)ナポリ方言でラグーの事です。

僕はナポリに偏愛を抱いておりますが、その大きな理由にユーモアセンスと、文化レベルの高さが揚げれます。
このユーモアセンスが曲者で、日本人にはブラック過ぎます。

皆様の想像を凌駕するほど、口が悪い人が多いです。
慣れるまで、これが人種差別か!とへこむくらい色々言われます。

今でも家族付き合いしているジェンナーロの所でも、働き出して3日目位に(ジャッロ、イエローの意)と呼ばれました。
結構効きましたね。
イタリア生活もかなり慣れて、イタリア語もほぼ苦労しなくなった頃ですので、カウンターパンチを受けた気分でした。

その頃、料理と同じくらいかそれ以上に頑張っていた事があります。筋トレです。
いい加減、腹をくくりました。

今度、ひどい事言ってきたら、倍にして言い返してやろう。
口の悪さなら、僕も自信はありました。
僕の親父の口癖は、何さらしてけつかんどんねん。
これ、何してんの?と同じ意味ですよ。
吉本新喜劇以外で生で聞いたのは、親父から位です。
言い返した後、乱闘になってもええ勝負してやる!と意気込んでいました。

しかし、外人は軒並み必要以上に筋肉質ですからね、真剣に互角の肉体を手に入れなければ厨房のトップには立てないと悟りました。

良い精神は、良い肉体に宿ります。
一回り体が大きくなると、心に余裕ができました。

その頃には、店でシェフの次の次くらいに、口の悪い奴に成長していました。(シェフの暴言は芸術でした。料理のメモを取る事は殆どありませんでしたが、彼の暴言は良くメモリました。知能の高さと、気品すら感じました。
今思えば、俳句や和歌に通じるような通じないような。。)
当然殴り合いになんかなりません。
悪口は、彼らなりのコミニュケ―ションの方法なんです。

例えば、朝一番の厨房のあの殺伐とした空気。
まだ、昨日の疲れが全く取れていない中、リーダークラスが若手になんかきっつい悪口をかまします。
そこで、トンチの効いた返答ができれば、こいつはもう目が覚めてるとみなされますし、やたらとブスッとすれば、未だ疲れているからほっとこうとなります。
全く悪気がないんですね。ゼロです。
信じられない位ゼロです。
ちょっとした悪口は、相手との距離を測る物差しですね。

むしろ、イタリア人は嫌いな奴は軒並み無視です。全く相手にしない。
もしくは、仲間、友達なら気に食わない所はすぐに言ってきます。

今年のクリスマスの営業中も、死ぬほど忙しい合間にイタリアから無数の電話がありました。
僕以外のスタッフがでて、イタリア語が分ろうが、分からなかろうがお構いなし。

皆、テンションが上がっているから(イタリア人にとってクリスマスは、1年で1番大切な日です)
凄まじい暴言です。
今年、頂いたボン ナターレ(メリークリスマス)の数例
ボン ナターレ おかま
ボン ナターレ 田舎っぺ
ボン ナターレ 肥だめ野郎
ボン ナターレ 足ふきマット

涙でそうですね。これを言うためにわざわざイタリアから国際電話をかけてくるんですよ!
クリスマスは、家族で祝います。その家族とのボンナターレのあいさつが終わると、毎年カトリックでもない僕に国際電話をかけてくれる。
(まあ、時間に問題はありますが。。。決まってディナーの営業中の一番忙しい時に2-3軒あります)

なんかもう、竹馬の友って感じですね。

この様に、彼らの暴言には愛が詰まっている事を念頭に置き、先ほどのポエムをナポリ弁から関西弁に意訳します。

  ラグー
ワシが好なラグーは、オカンが作ってくれたやつだけやなー。

お前と結婚してからは、話題にのぼるだけや。

別にワシ、特別口うるさい訳やないで。
せやけど、もーええやろ。

よっしゃ、分かった。お好きなように。
夫婦喧嘩になるまで言い合うか?

ほな何かい、お前はこれがラグーや言うんか?
ワシこれでも食べるよ。食べるんは食べる。

せやけど一言だけ言わせてくれ。
これは肉のトマト風味煮込みや。


んー、すごいでしょ?
ナポリのコメディアンでエドゥワルド デ フィリッポという大阪の藤山寛美みたいな方がいました。
その方の作品です。

ラグーへの偏愛、
母への愛
嫁さんへのジレンマ
最後の気の効いた一言
凄まじいキレですね。

はい、写真コーナー!!!
 

2014617103142.jpg
木杓子が立つ。
黒ずんだ赤。
台所がドロドロになる。
 
本物のラグーの条件です。

 

2014617103155.jpg
ポエムになるこのラグーナポレターノ。
別名、日曜日のラグー。
日曜日は家族そろっての、大昼食会です。
そして、ナポリ人にとってのご馳走とはラグーです。
 
ツィーテという大きなマカロニと合わすほか、カーニバル時期に必ず食べるナポリ風ラザニア。
このラザニアは食の世界遺産に登録されるべき逸品です。
ベシャメルでなく、リコッタチーズとモッツァレッラ、そしてこのラグーで作ります。
 
僕が死ぬ時は、このラザニアを周りに敷き詰めて火葬場に送ってくれと、嫁さんに頼んでいます。
ラザニアが焼ける香りを楽しみながら、天に召されましょう。
 
あと、ニョッキ、カネロニ、ラビオリなんかもこのラグーで食べます。
 
そして、料理の本には絶対のらない絶品が、ラグーパン。
パンにモッツァレッラ載せて、あっついラグーをかけます。
悶絶します。
 
ラグーナポレターノの1番の特徴は、いわゆるミートソースタイプのボローニャ風がミンチを使うのに対し、肉の塊をトマトで煮込み、トマトに肉の風味を移します。
そして、煮込む事7-8時間、ラグーは赤黒くなり、濃度のあるラグーが、ポコ、ポコっと沸くたび台所中が真っ赤っかに汚れます。

 

201461710327.jpg
こちらが煮込みに使った、お肉の塊。
ナポリでは、パスタを食べた後、メインとして食べます。
あまり、こちらをほぐしてパスタと一緒に食べる事はしません。
 
当店では、パスタ料理をお出しする時、別皿で少量お出ししております。
2014617103225.jpg
詰め物をした豚の皮。
これを入れるか入れないかは大きく変わります。
 
ムッチリ、ねっとり。
沢山食べるものではありませんが、美味しいですよー!
2014617103242.jpg
そして欠かせない脇役の骨。
骨付きのスペアリブを使う事もありますし、この様に骨だけ取っといたものを加える事もあります。
この骨に残っているお肉は、僕のです。
売り物ではありません。

 

201461710330.jpg

ボローニャ風のラグーが嫌いな人はいないでしょう。
でも、ナポリ風ラグーは、初めて食べて感動する方と、無反応な方と結構分かれます。

お客様の場合、1度無反応ならそこでおしまいで残念ですが、僕の経験上3-5回食べると必ず虜になります。

今までの従業員達がそうでした。
最初から夢中になる子もいたら、何回目かになんじゃこりゃーと急に叫ぶ子。
実は僕もナポリで初めて食べた時、意外と印象に残りませんでした。

しかし、最近のジラソーレのラグーは一線を越えました。
初食の方も、恋に落ちると思います。

 

2014617103333.jpg
サルトゥディリーゾ。
宮廷料理です。ナポリ風ラグーで炊いた米と、色んな具が詰め物で入っています。
茹で卵、ポルチーニ、サラミ、レバー、グリンピース、ミートボール、モッツァレッラ。。。
 
これは、年末のクリスマスの25日と、29日のイベントでお出ししました。
まさにパーティー料理の代名詞な料理です。
評判も良かった。
 
この年末イベント、予想以上に大盛り上がりでした。今年から定番化を考えています。

 

201461710341.jpg
カットした図。新米カメラマン、ヒデの写真でちっちゃいですね。
ヒデ、これからもっと接写せなアカンで。
 
まあ、散々僕が早くせーと急かさせてましたので、こんなもんでしょう。
見た目案外地味ですけど、食べたらナポリの食の宝箱やーって感じです。