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芦屋のイタリア料理とイタリアワインのお店

tel 0797-35-0847 open AM11:30~PM2:00 PM6:00~PM9:00 (L.O)

2020年2月

ご案内 4月から営業スタイルが少し変わります。

誠に勝手ながら、4月から下記の通りに営業スタイルを変更いたします。

この変更に至った経緯や、今後の僕の展望、小さな夢、どデカイ野望など、このご案内の後半、そして後日続くであろうブログでお伝えいたします。

毎度の事ですが、かなり長くなるのでまずは変更事項からお知らせします。

1、4月よりランチ、ディナーともに完全予約制になります。

2、ランチのご予約を11:30スタート  12:00スタート、13:00スタートでお受けいたします。2回転とかではありません。ご都合の良いスタート時間をお選び頂き、そのお時間の少し前にご来店下さいませ。

同じスタート時間にご案内出来るお人数、組数に限度があります。

ご希望のお時間の枠が埋まっている場合、違うお時間でのスタートをお願いする場合がございます。

お料理は変わらず4000円のコースと6000円のコースです。

3、ディナーのご予約は、18:00スタート 18:30スタート 19:00スタート 19:30スタート 20:00スタート 20:30スタートでお受けいたします。

各スタート時間、1組のみご予約をお受けします。

出来るだけ丁寧にお客様をお出迎えし、お料理やワインの説明をさせて頂くためです。ご希望のスタート時間が埋まっている場合、その前後のスタート時間もご考慮頂けますようお願い申し上げます。

ご希望のお時間にお席をご用意させて頂けますよう、少し早めのご予約をお勧めいたします。

お料理は8500円のコースとアラカルトになります。

4、ディナータイムのナポリ料理のコースは終了いたします。

   アラカルトにてナポリ料理をお楽しみ下さいませ。

5、沢山のご要望がありますアラカルトは今後も続けますが、小振りな前菜3品をお任せでご用意させて頂きます。(お一人様1800円)

その後、更に前菜を追加して頂く事も出来ますし、パスタをたくさん召し上がるもよし、メインをたくさん召し上がるのも、その日のご気分でどうぞ!

6、4名様以上でアラカルト(ナポリ料理)ご希望のお客様には、6000円~のご予算でコースをご提案いたします。

四名様以上になりますと、事前の準備無く、お越し頂いてからお料理をお選び頂き、そこから調理を始めるのはあまり現実的ではありません。

アラカルトでのご注文は2、3名様でご利用の際、お楽しみくださいませ。

7、営業時間中のお電話には出れない事が増えると思います。

ご予約、お問い合わせのお電話は

9:00~11:30

15:00~18:00

21:00~が繋がりやすいかと思います。

合わせてWeb予約も是非ご活用下さいませ。

8、ドルチェ(デザート)のテイクアウト販売も3月一杯で、一旦終了いたします。

ナポリ風ババのみ前日までの要予約でご用意させて頂きますが、生産量、在庫ともに限界がありますので、売り切れの場合はご了承くださいませ。

   

 

 

 

昨年の秋頃からスタッフが減り、少人数でお店を回す工夫をしてきました。

通常なら躍起になって求人募集を掛け、スタッフの補充をするところですが、

今回は積極的に求人募集をしませんでした。

何故なら、長年働いてくれていたパティシエの藤本も、ホールの木原さんもこの春で退職が決まっていたからです。

この2人の代わりが、早々見つかるはずがありません。

かといって、取りあえず頭数を揃える求人募集をした場合、その頭数の売り上げが必要です。

つまり戦力ダウンしながら、今までと同じ人数のお客様を迎えなければなりません。

僕にとって一番のストレスは、自分が思っているクオリティーの仕事が出来ない事です。

そして僕が出した結論は、僕とソムリエの湯浅と最近入った藤田さん(スーパーシュフ!)の3人で続けて行く事です。

勿論、クオリティーは絶対に落としません。

その為に少人数で働く決心をしたんです。

当然、今までより承れるご予約の数は減ってしまいます。

ランチは10名様~12名で満席

ディナーは8名様~10名様で満席とさせて頂きます。

残念ながら、もうしばらくカンティーナは機能させません。

でもクオリティーと、ご来店頂いたお客様の満足度は必ず上げます。

必ず。

 

せっかくスペースあるのにもったいないとか、予約してないけど席空いているなら通してよと、きっとそんなお声も頂くと思いますが、一回ギュッと大切なエッセンスを絞り込み、そこから再出発したいと思います。

ここまでだけの文章を読むと、ジラソーレ大丈夫かな?とか、杉原大変そうやなと変にご心配をお掛けしてしまうのではないかという心配を僕がしてます。

 

もしかしたら結構大変かも知れませんが、大変な時は大きく変わる時です。

例えば完全予約制にするのは、2002年の創業時からの大きな目標でした。

良い面、悪い面どちらもあると思いますが、さらにその先にある僕の展望、野望達成の為にはいつか通らなければならない道ですので、ピンチをチャンスに変えたいと思ってます。

 

それに、退職する藤本も木原さんも、それぞれの人生の展望や目標を果たさなければなりません。

お二人にはこの数年、本当に心から応援して頂き、沢山のパワーを貰いました。

偶然、お二人の退職時期が近くなりましたが、それを理由に退職時期を伸ばし、お二人の人生を停滞させる権利は僕にはありませんし、望んでもいません。

勿論このメンバーでもっと続けて行けたらいいなぁと思いますが、それを実現させる為には間違いなく多店舗展開し、より大きな組織にする必要があります。

それは誰も望んでいない展開です。

 

しかも藤本に至っては、究極の円満退社アイコン、寿退社です笑

ジラソーレに来た時はまだ22歳くらいでしたので、なんか娘が嫁に行く感じで色々心配もしましたが、今後は生活のベースをイタリアに移し、パティシエ以外の仕事にチャレンジしますと聞いて、今度は僕が藤本を応援する番だと思いました。

木原さんにも同じです。

僕が2回目の移転を企てたとき、身内には揃って反対されました。

せめて時期を変えたらとか。

応援して欲しい人に、水を掛けられる辛さも僕は経験してます。

それなら、まず僕が応援しよう。

ジラソーレはちょっと箱がデカイけど、上手く乗りこなして行きます。

幸い、ソムリエの湯浅は今仕事が楽しくて仕方がないと言ってくれる位、仕事に打ち込んでくれていますし、最近入った藤田さんも大活躍してくれてるし、結構アルバイトも沢山いてくれてるし。

 

そんな感じで4月以降の作戦を立てつつ、準備を進めています。

…で気が付けば例のウイルス騒動で、エライコッチャですが…

まとめて全部乗り越えまっせ〜

 

カリフラワー

 

今のディナーのおまかせコースの評判にかなりの手応えを感じている中、先日とある初来店のお客様を見送る際、お肉の付け合わせのカリフラワーがめちゃくちゃ美味しかった!

と満面の笑みで仰って頂いた。

 

あれだけの魚介類と品数を召し上がり、食後の一番の感想が付け合わせのカリフラワー

 

取り敢えず僕もバレないよう満面の苦笑いでお客様を見送ったものの

その後、これはセーフなのかアウトなのか

 

長い自問自答はその後妄想へと変わり、

僕のカリフラワーへの偏愛を再自覚し、その偏愛を受け入れて頂けたという結論で、やっと眠りに就くことが出来た夜でした。

 

これは僕にとっての日常である、反省、または自己嫌悪から脱線する妄想によって生まれる小さなお話。

ちっとも反省してないのが良くわかります。

 

 

杉原の眠れない夜の物語

 

登場人物

カリフラワー

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キャベツ

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島中さん

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その他の季節の野菜たち

 

 

 

 

 

「カリフラワー」

 

~出会い~

 

まさに冴えない転校生の見本の様なヤツだった。

あだ名は一瞬で決まった。

色白ポッチャリ天パ。

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この長すぎるニックネームはすぐに本名化することになる。

ポッチャリはミドルネームとなり、スペイン人の本名が軒並み長すぎるように色白ポッチャリ天パはクラスメートにとって長すぎる本名となった。

そして用途とシチュエーションにより、

〈おい、色白天パ!〉

《ねーねー、ポッチャリ天パ~》と言った具合に色白ポッチャリ天パからのニックネームが無限に生まれる訳だ。

 

クラスのみんなは軽々しく彼を好きなように呼び捨てるが、僕にはなぜか抵抗があった。

確かに色白で、ポッチャリで天パだが、その容貌とどんな呼ばれ方をしても顔色ひとつ変えない、むしろ日本語があまり通じてないのかと思わせるその空気感が、もしかしたら彼はハーフなのでは?と思う事もあり、外国製に弱いお婆ちゃん子の僕は、カリフラワーに対し多大な好奇心とほのかな憧れと、微かな甘酸っぱい対抗心を抱いていた。

 

~アイデンティティ~

 

青春時代の月日が経つのは早く、僕らの学年も就職が順次決まって来たようだ。

春野菜組の就職先の一喜一憂ぶりはそれは凄かった。

特にえんどう豆で就職先が豆ご飯に決まったやつの嬉しそうなこと。

そいつの卒業文集は、

【目標は高級料亭でご飯と同じ割合の豆ご飯になりたい】

だった。

ステキな言葉だな、と思った。

逆に泣き叫んで嫌がってたえんどう豆の就職先は、乾燥させられたのち、シュウマイの上に乗せられるらしい。

[絶対子供に残されるやんけ~、これで給食に出された日にはなんでシュウマイにはグリンピース乗ってんねんって子供らに言われるねんぞ!どんだけ居心地悪いと思ってんねん!]

と、既に夏に就職が決まっている枝豆に愚痴っていたが、枝豆は先祖代々の家業みたいな塩茹でに決まっているらしく、シュウマイの上に乗るまでのえんどう豆の加工、人の手に触れる回数に少し嫉妬していた。

(俺なんか剥かれもしない...鞘から出たと思ったらもう口の中だぜ。

おっさんに食われるのか、綺麗なお姉さんにモグモグされるのかも分からねえ)

 

 

野菜として生まれた以上、これが究極の自分の存在価値というのを知りたい。

それはクラスのみんな同じ気持ちだと思う。

僕の究極の存在価値ってなんだろうウサギに食われるのは嫌だなぁ。

 

そんな事をボーッと考えいると、ポツンとカリフラワーがいた。

僕の自意識過剰が祟り、仲良くしたいと思いながら殆ど話したこともなかった。

 

僕『ねえ、ポッチいや、カリフラワーは就職決まったの?』

ほとんど初めての勢いで話しかけてみた。

 

カリ(んー、まだ。)

 

相変わらず単語でしか話さない。

 

僕『どこになりそうとか、あんの?』

 

カリ(んー、お父さんは茹でてマヨネーズだった。ほとんどそれらしい。おじいちゃんはフリット。僕もフリットが良いな。キャベツ君は?就職先たくさんあるらしいね?)

 

?珍しい。ちゃんと会話出来るんだ

 

『まあね。でもお好み焼きは狙いたいよね、最低。僕の目標はロールキャベツ。なんだかロールスロイスみたいでカッコいいだろ?トンカツの横の千キャベツとか焼き鳥屋の突き出しは嫌だよなぁ。ところでフリット?!』

 

カリ (んー、おじいちゃんイタリア人だったんだけど、いつもクラスのヒーローで就職先もめちゃくちゃあったらしい。結婚して日本に来て息子、つまり僕のお父さんが茹でてマヨネーズだったの見て泣いたらしい。

マンマミーアって。

僕にはフリットになって欲しいみたい。

キャベツもロールキャベツより上目指したら?)

 

僕『上って?』

 

カリ(僕のおじいちゃんが見たキャベツで一番凄かったのはパスタだったって言ってた。アンチョビ風味なんだって。リゾットはもっと凄いらしいけど、作れる人があまりいないみたい。ほら、僕たち親戚でしょ?でもおじいちゃんはいつもキャベツ家の事、ちょっとだけバカにしてたけど、パスタとリゾットのキャベツには時々負けるって言ってた。どうせならパスタ目指したら?)

 

『え、僕がパスタ!?え、僕たちが親戚???え、、お前、僕を下に見てたの!!!』

 

色白ポッチャリ天パが、僕を下に見てた僕の彼に対する劣等感はDNAなのか

 

僕『でも、でもな、キャベツがカリフラワーの格下って何の根拠なん?お前のじいちゃんが勝手に言うてるだけやろ?去年一年、一回もカリフラワー食べてない日本人多分めっちゃいんで!しかも親戚ってなんやねん?てか、お前クオーター?!』

 

カリ (ホンマに知らんの?キャベツはイタリア語でカーヴォロ、僕、カリフラワーはカヴォルフィオーレ。お花のキャベツやで。うちの家はおじいちゃんの代で日本来たけどキャベツも元々はヨーロッパ、今の形になったのイタリアやろ?聞いたことない?)

 

おばあちゃんが昔から自分は外国の高貴な血筋なの、みたいなんよう言うてて、てっきり敗戦国特有の欧米コンプレックスかと思ってたけど、半分ホンマやってんな

 

その事をおばあちゃんに確認したくて堪らなくなり、キャベツは家路を急いだ。

 

『おばあちゃん、おばーちゃん!ちょっと聞きたいねんけどカリフラワーって親戚なん?』

 

(カリフラワーさん?素敵な方ね。そうね、ご親戚よ。)

 

すっかり水分が抜け、所々黄色くなっているが幸い頭はしっかりしている。

 

(あの方のヨーロッパでのお立場は、いくら親戚といえども気軽にお声掛けが出来るもんじゃない、本当に高貴な方よ。

あの方は、ああ見えて私たちの様に生食もいけるの。

それは上品で歯ごたえの楽しいサラダにおなりだわ。

でもあの方1番のお力は火が入った時。

それも茹でたりせず、揚げたり、焼いたり、蒸し焼きにした時のあの方の香りは街中に広がるわ。あの真っ白なお身体のどこにそんな香りが秘められてるのやら。)

 

(でもね、私達だって伊達に親戚な訳じゃないのよ。あなたのおじいちゃんね、イタリアでパスタになったの。会った事もないおじいちゃんのお話をすべきか分からず黙っていたけど、あなたのおじいちゃんは伝説のキャベツなのよ。)

 

僕のおじいちゃんが、伝説のキャベツ

 

 まだまだ23枚脱ぎ捨てりゃ、私だって現役よ、ホホホが口癖だが、2週間毎におばあちゃんは小さくなっている。

もう、そんなに沢山の時間は残されてないんだろう。

なんとかおばあちゃんに、僕がパスタになったところ見せたいどうすれば良いんだ?

 

~旅立ち~

 

パスタになりたいという抑えきれない衝動がキャベツに生まれたが、就職先は自分で選べない。

目の前が一瞬開けた気がしたが、もしパスタになれなかったらと思うと暗澹とした気持ちになる。

夢を持つという事は残酷だ。

夢を持つという事には恐怖が付きまとう。

そして夢を持つ者には理不尽という試練が付きまとう。

今や、自分がお好み焼きになって鉄板の上で焼かれてる姿は想像したくない。

希望と不安で震えながら登校していると、

(キャベツぅ~、キャベツぅ~)と後ろから慌てた感じでカリフラワーがゆっくり歩いて来た。

 

『おはよう、どうしたんだい?そんな慌てたフリして?』

 

カリ (僕たちの就職先が分かった!僕たち同じ就職先だよ!担任の島中先生の伝票がチラッと見えたんだ。芦屋のイタリアンのお店で、オステリア ジラソーレってことらしい!

スゲーよ、2人とも夢が叶うかも‼︎)

 

『イタリアンって事はパスタ!?俺も伝説のキャベツになれるかも知れないのか?クッソ~やったんぞ~‼︎

 

 

案外、死刑執行はこの様に淡々と進められるのだろうなぁ、と自然に頭によぎったのは、寂しさと不安と覚悟のバランスが良かったのだろう。

 

日常のすぐ横の非日常。

 

そんな僕たちの出荷だった。

イタリアンに出荷される以上、お好み焼きはないだろう。パスタになれるチャンスが見えた分、なれなかったら凹むな。

しかし意外だったのは担任の島中先生が僕らを籠に入れる時、母親にもされた事がない位僕らを丁寧に扱ってくれた事だ。

もしパスタになる運命でなくても、精一杯の努力はしよう。

そんな穏やかな気持ちになった。

気持ちの整理が着くのを待っていてくれた様に、僕らを積んだ軽トラは出発した。

 

 

 流石イタリアンに出荷される生徒達だ。

見たことのない外国人留学生もいる。

片言で自己紹介するとスカローラくん、ブロッコリー ディ ナターレくん、プンタレッラくん、フィノッキオくん(彼はどうやらオカマだ),今や親友になったカリフラワー、そしてクラスでいつも威張ってるゴボウもいた。

 いつも自己主張の塊で、俺さえ入れば俺味さ!が口癖のゴボウも今日はおとなしい。

まさかイタリアンに就職が決まるだなんて、一回も考えた事がなかったらしい。

そりゃそうだ。

そしてゴボウにも夢があったそうだ。

 

(筑前煮になりたかった)

 

世界中の子供たちを筑前煮で魅了したかったらしい。

 

(俺、トマトソースで煮込まれるんかな俺らしさ、残るかなせめて豚汁になりたかったな。ゴメン、母ちゃん)

 

そう呟いてから、すっかり黙り込んでしまった。

 

気の毒でかける言葉も見当たらないが、僕らだってどうなるかまだ分からない。

気が付くと誰一人喋らなくなっていた。

 

暗く冷たい土の中の様な空気から一転、僕たちを積んだ籠は遂にジラソーレに到着した。

 

~運命~

 

どうやら結構忙しい時間に着いたらしい。

お店の人たちはバタバタと仕事をしているが、担任の島中先生は全く気にしてなさそうだ。

このシェフと呼ばれている人が、どうやら僕たちを料理するようだ。

忙しそうに仕事をして、少しぶっきらぼうに見えるがかなりの男前だ。

そのぶっきらぼうなシェフに怯む事なく、島中先生は僕らの説明を始める。

それに対してシェフは何を作るか答えている様だ。

 

あの留学生達はミネストラ マリタータという特別なスープになるらしい。

 

僕とカリフラワーの事はまとめて、

(シェフ好みです。)の一言だった。

ぶっきらぼうなシェフの口元が

少し緩んで見えた。

最後に、

島中 (シェフ、このゴボウはまかない用です~)

え、賄い?!僕とカリフラワーとゴボウは、ハッと目が合ったが、気の毒すぎて僕とカリフラワーは視線を落とした。その直後、

シェフ[おー、美味そうなゴボウですな!今日は賄い豚汁しますわ!]

とシェフの笑顔が溢れ、チラッとゴボウを見ると、一瞬でいつもの偉そうな顔に戻っていたけど、安堵のあまり涙は止まらない様だ。

 

~冬の風物詩~

 

さすがいつも威張っているだけの事はある。

なんて良い香りなんだ。

豚と味噌の香りが主役なのは知っている。

しかしゴボウ君、君のいない豚汁はイエス キリストが出てこない新約聖書と同じだよ。

そこが君の居場所だよ。

ほら、こんなにみんな美味しそうに君を食べてるじゃないか。良かったな!アーメン。

 

それにしてもどれだけの工程がかかるんでしょう、このスープ。

鍋、何個使った?

あんな個性の強いヤツらを別々に調理してるかと思いきや、最後合体ですか

この香り嗅いだ事あるような、初めて嗅ぐような懐かしいような、ドキドキするような

これがミネストラ マリタータか。

言葉通じなかったけど、多分これになりたかったはずやわ、あの外人さんたち。

僕も入れて欲しいもん。

 

はぁ、いつ僕らの番が来るんやろ

なあ、カリフあっ!

 

遂にカリフラワーの番が来た。

まだ何になるか分からない。

彼はずっと目を閉じている。

もはや天使にしか見えない。

 

パチッ、パチッ

ん、油の匂い

まさか、、夢が叶うんじゃねーかコンチクショウ!

 

髭面の男前のシェフのグローブのような手は、見かけによらず超繊細な動きでカリフラワーを23個房取りした。

 

パッと粉をつけ、真っ白な衣にカリフラワーを通し、油で揚げ始めた。

生のまま衣をつけられ、油で揚げられている。

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揚げ物の香りはするが、カリフラワー由来の香りは全くしない。

これが『アイツがなりたかったアイツ』なのか

イタリアンに来てスタッフを魅了したゴボウや、あの留学生達のオーケストラの様なスープを作るシェフがお前を揚げてんだぞ、カリフラワー!お前、こんなものなんか!その程度で俺を見下していたのか!

 

届くはずのない応援、いや叱咤激励を胸の中で大声で叫び続けた事約7分。

カリフラワーは油から引き上げられた。

やはり、一向に彼の香りはしない。

ただただ揚げ油の甘い匂いが厨房を満たしていた。

軽く塩を振られたカリフラワーのフリットがまな板に乗せられた。

皿じゃない。

もしかして賄いか?

そしてカリッとザクッの間の音を立てながら、カリフラワーは半分に切られ、断面に塩を塗られた。痛覚があれば発狂する痛さだろう。

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その時、音と湯気に一歩遅れてカリフラワーの香りがやって来た。

いつものアイツの歩くスピードと同じだ。

 

なんじゃこりゃ

断面からこぼれ落ちる香り。

香りという以上気体なはず。。

しかしこの香りの密度は固体のそれを思わせ、色まで連想させる。

生の時の穏やかなアイツの香りは、加熱によりこんなにも増幅するのか。

しかも完全に閉ざされた衣に包まれる事により、その香りを完璧に内に抱え込んだ訳だな

このカリフラワーを噛んで口の中で香りが広がったらどうなるんだ。

一房食べたらカリフラワー丸1個食べた気がするんじゃないか

恐るべしカリフラワーのフリット。恐るべしジラソーレのシェフ。

親友の夢は叶ったのだ。

あっぱれカリフラワー。

あっぱれイケメンシェフん?

 

このシェフ、揚げたてのカリフラワーを口に放り込み、“エクセレント!“と叫ぶと、残りのフリットをスタッフに食べさせて、カリフラワーの房取りの続きを始めた。

ジャーっとぶっかける様に水洗いすると、EXVオリーブオイルでニンニクと唐辛子を炒め始め、そこにパンチェッタを加え、まだまだ水浸しでクシャミしそうなカリフラワーを鍋満タンに詰め込んだ。

イタリアンパセリをパラリ。

イタリアの粗塩をパラリ。

すぐ蓋をして注意深く火加減を調節すると、カリフラワーの鍋は放ったらかしにして、パスタを練ったり、電話に出たり、なんかのピュレ作ったりと、全く手を止めない。

時々カリフラワーの鍋を揺すりに行くが、まだ一回も蓋を開けていない。

中は一体どうなってるんだ。

 

でもシェフが鍋を揺するたびに、音が変わってきたな。

最初はカリフラワーがゴロゴロ転がる音だったのに、今はビシャンビシャンって

もうあのコロコロしたカリフラワーには会えない気がさっきからしている。

でもあの蓋を開けた時、僕らキャベツ家が数世紀に渡りカリフラワー家の格下に甘んじてきた理由が分かるはずだ

 

皆既日食を待つ気分で蓋が開けられるのを待ち続け、ついにその時が来た。

 

ひっくり返した鍋蓋の上に、優しい黄色味を帯びた香りの塊の湯気がボワ~つと立ち上った。

ボッティチェッリのビーナスの誕生。

一瞬あの名画が脳裏に浮かんだ。

 

その名画をかき消すよう、シェフはその鍋にお湯を足し、色んな形が混ざったパスタを投入した。

アイツが成りたかったフリットは、シェフにとってはカリフラワーへのテストだった様だ。

選ばれしカリフラワーだけがたどり着く、カリフラワーの極致。

じっくりと蒸し焼きにされたカリフラワーにお湯を足し、そこでパスタを煮込む。

この単純かつ効率的な作業内で形成されるこの香り。

 

憎悪をDNAに組み込まれ、今この瞬間にでも隣国を殲滅してやろうと思っている戦時下の将軍も、この香りを嗅げば少なくとも、ま、明日でえーわ、となるはず。

嗅ぐ者を愛と平和で満たしてくれる香りなのだ。

 

友よ。

やったな!

お前の爺ちゃん、今頃パラディーソで嬉し泣きでマンマミーアって泣いてるよ。

お前がカリフラワー家の新しい伝説になるんだ。

 

他人事ながら嬉しくて震えが止まらない。

感動だ。

僕は今、心から感動している。

ウミガメの出産シーン以上の感動だ。

この感動は友とパスタが共に煮込まれている11分間続き、その11分間はまるで旧約聖書の創世記と出エジプト記そのものだった。

 

 

 

続く…かも笑

 

季節限定カンノーロ第二弾!

皆さまこんにちは〜!
パティシエ藤本です!

ご好評頂いた、あの!和カンノーロに続き、こちらの季節限定カンノーロが完成しました〜!!

じゃん!!

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はい!
今回は苺のカンノーロ
ベースはしっかりリコッタチーズ
たっぷりのいちごと自家製のリコッタチーズとイタリア産のリコッタチーズを合わせてチーズの風味もしっかり感じる、これまたリッチなクリームです

ところどころに仕込んだ自家製いちごジャムもいいアクセントになっています
パッケージもバレンタイン✖️に合わせてピンク色とレース柄のリボンを使用。
ギフトにもピッタリheart02


前回同様、テイクアウト限定、
出来たてを急速冷凍させた冷凍状態でのお渡しになります。


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ギフト箱もご用意しておりますが、もちろん1本からお買い求めいただけますよ!
前回も食べ比べしたいと和カンノーロと普通のカンノーロ、両方お買い上げいただくことの方が多かったですbleah


ご希望のお客様はお越しいただくまでに一度お問い合わせいただくことをオススメします。
特にギフト箱をご希望のお客様はご来店いただいてからご注文頂くと大変お待たせしてしまう可能性がございます。
一ヶ月だけの期間限定商品(たぶん)、テイクアウト限定商品です!

興味のある方は是非一度お問い合わせを!!